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2017年4月4日 ②

13時過ぎ。覚王山の定食屋はほぼ満席。空席を探して本棚の裏側の3席をのぞきこむ。満席。突っ立って待っていると、奥の厨房から一番元気な女性スタッフが俺に向かって大きな声であいさつしてくる。「いらっしゃいませー!おひとりさまですか?」この辺でみんなに見られる。「もう少しで開けるんでちょっと待っててくださいー!」


会釈だけして入口の雑誌置きから週刊少年ジャンプを手に取って読み始める。『BORUTO』が表紙。この間セブンイレブンで立ち読みしたときに目ぼしいところは全部読んでしまっていた。目ぼしいところっていうのは『BORUTO』『僕のヒーローアカデミア』『ONE PIECE』『鬼滅の刃』。(今週号の『鬼滅の刃』危機的状況をテンポよく描く場面展開に引き込まれる。面白い。絵も好きだ。後輩の彼女が「現代風の高橋留美子」って言ってたあの絵。週刊連載の絵は長期連載に伴って簡略化や記号化が進む傾向にあるらしいので、なんとか味のある絵を保ってほしい。反対に、今のままでももちろん十分上手な絵だけど、改善すべき点もあるような気がする。)立ち読みではいつも読まない『磯部磯兵衛物語』を読むことにした。花見の話。磯兵衛が酔客に絡まれてるとこらへんで店員さんに呼ばれた。


さっきのぞき込んだ本棚の裏、3つ並んだ二人掛けテーブルの中央に通される。メニューを持ってきたのは同い年か少し上くらいのかわいい女性スタッフ。初めて見る顔。メニューを差し出した左手の薬指には指輪。別にどうでもいいけど。メニューを見る。ここはランチの時間に日替わり定食を頼むと食後に紅茶かコーヒーが無料でついてくる。ただ今日の日替わりが白身魚のフライ(惹かれない)、ナポリタンスパゲティ(あまり惹かれない)、カニクリームコロッケ(5日前に食べたばっかり)だったので別の定食にしたい。5日前一緒に行った子が食べていたエビフライ定食は?でかいエビが3,4本並んでいるやつ。からあげ定食?やたらでかい唐揚げが5,6個のってるやつ。安いハムエッグ定食とかにして追加料金支払ってコーヒーセットで注文する?でもハムエッグ(惹かれない)…。

日替わり定食を頼んだ。飲み物はホットコーヒー。注文した料理が運ばれてくるのを待つ間、自転車修理の油で黒く汚れた両手をおしぼりでふいた。おしぼりに黒い汚れが移った。右隣の席の中年の娘とその母親がお会計に立った。「テーブル動かしてもらっていい?ごめんね、狭いからここぶつけちゃうとお水こぼしちゃう」。テーブルを左に寄せてあげた。左隣の席はおひとりさまの中年の女性だった。水とお箸と沢庵の小皿が最初に出てくる。そのとき新しいおしぼりも頼む。店の中を眺めたり、スマホでメモを書いたり(「平成スマホ文学」っていい題だと思う)して時間をつぶす。店内にはスーツ姿のサラリーマンが二組、三人組のおそらく新入社員たちが一組、子ども連れのママ友、偕老の老夫婦(この店量多いのに食べきれるのか?ちなみに彼らのテーブルの日替わり定食のスパゲティが天井灯をうけて光り輝いてうまそうに見えたのが俺の決断に寄与した)、カップルが二組(男よ、デートはここでいいのか?この店量多いぞ。目の前の方のカップルの男は、上着を脱ぐとピンクのセーター。ピンクのセーターの上の顔は毛が濃くて彫りも深い。照英と藤巻亮太を足して割ったみたいな顔してる。女はボタニカル柄の黒地のワンピース。モダンな雰囲気で、女の子比率(一人の人間の中には女の子と男の子がいる)の高い、かわいらしい子。)、おひとりさまが何人か。空いた右隣の席に仕事仲間とおぼしきスーツ姿の男女が座った。左側のおひとりさまがお会計に立った。


しばらくすると料理が運ばれてきた。カニクリームコロッケ、白身魚のフライ、スパゲティ。千切りのキャベツ、ポテトサラダ、レモンとタルタルソース。白米と味噌汁。魚美味しかったー。おなか一杯になった。食事中、左側の本棚の陰から高校生らしき制服姿の女子がのぞき込んできた。店内のレイアウトはのぞき込みを誘引する構造になっている。スーツ姿の姉と左隣の席についた。


右隣のスーツの二人はワンピースの話をしていた。「私まだビビのとこ」「遅い!」「ビッグマムの娘のサンジの婚約者、ホールケーキアイランド編の初めの方にもう出てきてた。三つ目の、おでこに目のある」「へぇ~。え、なんて?」「は?」「聞いてなかったごめん」「おいっ!」
左隣の姉妹は、卒業式なのか、入学式なのか、入社式なのか、そこでの二人の共通の知人についての話をしていた。「○○ちゃん、可愛かったね」「うん、しっかりお化粧して」「写真撮ってフォトに乗せてもいい?」「ダメっ。絶対やめて」「グループに招待してもいい?」「いやいや、ばか!絶対だめ、やめて」高校生は制服の上着を狭いところでもぞもぞしながら脱いで、白いセーター姿になった。俺のところに運ばれてきたホットコーヒーを見て姉が「ホットにしとけばよかった」とつぶやいた。アイスコーヒーにすると追加料金が50円かかる。身体はなるべく冷やさないほうがいい。

 

 


テーブルの上には二つのおしぼり。二つ目も口を拭った時にナポリタンが移った。飲みつつあるホットコーヒー。親指くらいのアルミ細工のポットに満ち満ちた白いパントリークリーム。おひや。

裏返しの御勘定書。
御勘定書には手書きで「てい」「A」「一」「750」「H」「8中」。
全部の意味推測できる?

席も空いてきたのでしばらく本を読んだ。ペテルブルクが舞台の本。

 

お会計を済ませて店を出る。

桜を見に行く!