一年後

休みなのは昨日が会計締めだったからだ。それが終わってシフトを作るために山下さんは帰って俺は残って、売り場の平台の蛍光灯が点いていて、フードマットが冷気を逃さないように膨らんでいた。

 

後輪が鳴る自転車に乗って覚王山へ向かった。ドトールの角、寺川の部屋の道を走った。寺川はまだ起きていた。部屋の明かりが点いていた。

 

その道は覚王山に直接は続かない。途中で右折しないといけない。その道は起伏に富んでいる。何も知らない人間が行くと疲労ばかりが手に入る。

 

その道のことを一年前に書いてブログにアップした。それは下書きに戻されることなく今も公開され続けている。雨後の道、夜の闇の怖い部分を覗くように歩いた。心に非日常の刺激を招くためだった。次第に自分の意図した通り恐怖が心の中に染み込み始めた。しかしそれは自分の許容量を超えて、自分の操作の及ばない速さで心を恐ろしく染め上げはじめた。自ら招いた暗闇に自らが溺れ死にそうになった。黒い乗用車が路地からにゅっと顔を出した。池下駅の高層マンションがありえない方角から現れて自分を見下ろした。間際、水面から顔を出すように日泰寺の参道、黄色い擦り硝子の箱型の街頭と月光の道に出、息をした。

そんな内容だった。

 

昨晩はタクシーとすれ違った。懐かしい気持ちで池下の高層マンションを見出した。日付が変わった頃だからまだ歩いている人たちがいた。仕事終わりのサラリーマンが真弓苑の路地から飲んだばかりのように顔を上気させて歩いてきた。


真弓苑、先客が一人、自分のいつもの席の隣に座っていた。その隣に座った。スマホの電池が切れて白いノートを取り出してそこに書き始めた。真弓苑でのことはノートに書いてある。天津麺を食べた。俺の好きだった地元の天津に似た見た目。あんの味わいはそのものでうまい。卵は分厚くて飽きが来る。瓶ビールを飲む。出っ張りの下で雨を除けていた自転車。後輪がチェーン錠を噛んでいる。雨後の坂を下った。気持ちよく解放するように放歌した。ルブラの前でレインコートのおばさんとすれ違った。ツタヤのバス停のベンチでスーツの男が一人、頭を垂れて座っていた。信号を渡ってセブンでマンゴーのアイスと500mlの缶ビールを買って帰った。

 

世界の美しい山々、昨日はアメリカのヨセミテとカナダの山だった。それとか他の番組とかを見ながら飲んで、しばらくしてシャワーを浴びて陰毛を短く刈った。途中で玉袋の皮をはさみで挟んでかなり痛かったけどこっそりと快感もあった。噛まれるのが好きなのだ。犬を飼っていたから。

 

ベッドに横になる。毛布が暑くて床に蹴落とした。掛け布団も暑かった。エアコンは点けなかった。窓を開けたまま、パジャマのズボンも脱いで眠った。

 

起き出してシャワーを浴びた。寺川にラインを送った。それから着替えて自転車に乗って店に向かった。赤いチェックのシャツをインして着てみたのが恥ずかしいようなオシャレで嬉しいような変な感じだった。誰からもなんの評価も与えられず宙に浮かんでいた。自分の意見を定めかねている。店で母さんに頼まれたお中元を買って志村さんと少し話して外に出た。川津さんが少し前に外に出ていたその後ろ姿を見送った。それから池下のコメダにやってきて、四日市のパフュームたちとの飲み会について"いんでんかずみ"のグループにラインを送った。ジャンププラスで桃華という話を読んだが異人種と迫害に関する物語で起承転結のしっかりした、無理のない、それでいて心を動かすストーリーで面白かった。ツイッター大根仁という映画監督を見つけてフォローした。

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